小泉首相の靖国神社参拝に対する抗議声明

内閣総理大臣 小泉 純一郎 殿

 

 私たち日本キリスト改革派教会は、本年10月17日に行われた小泉首相の靖国神社参拝に対し、以下の理由により強く抗議します。

 

1.首相の靖国神社参拝は憲法の政教分離規定への違反行為です

 小泉首相は本年10月17日に首相就任以来5年続けて靖国神社参拝を行ないました。本年9月30日に大阪高裁で、小泉首相の靖国参拝に対する明確な違憲判決が出されたにも関わらず、司法の判断に聞き従うことなく参拝が強行されたことに対して、わたしたちキリスト者は深い憂いを感じています。

 今回首相は、今までの参拝形式を変更し、本殿での参拝ではなく、拝殿で参拝し、従来行っていた「内閣総理大臣 小泉純一郎」との記帳も行いませんでした。しかし、どのような参拝形式を取ろうとも、参拝そのものが宗教行為であること、また、報道機関にあらかじめ知らせたことにより多くの国民が注視する中、総理大臣が白昼堂々と公用車を使用し、秘書官を同行させて参拝したことは、明かに公的参拝であると言わざるを得ません。したがって、小泉首相の靖国参拝は憲法20条3項において規定されている政教分離原則に違反する行為です。

 そもそも神道に限らず、国家や為政者が特定の宗教と結びつく時、宗教的権威によって国家権力が絶対化され、個人の良心の自由や信教の自由が侵害されます。事実、戦前の日本は政教一体の国家神道体制の下、国内外の多くの人々の良心の自由、信教の自由を奪い、基本的人権を侵害してきました。そうであるからこそ、現憲法20条は、その反省の上に立って国家と宗教の厳格な分離を定めた政教分離原則を定めているのです。小泉首相の靖国参拝はこのような政教分離原則に反する行為であり、また、国家が再び特定宗教と結びつくことに道を開くものであります。

 

2.首相の靖国神社参拝は表明された侵略戦争の反省をくつがえし、

  アジア諸国との和解を裏切る行為です。

 我が国は、アジア・太平洋戦争の反省の上に立って、憲法9条において戦争を放棄し、平和国家として歩むことを誓いました。また、歴代の総理大臣も1994年の「村山談話」に見られるように、戦争の過ちの反省を国の内外に表明してきました。それにも関わらず、日本国を代表する小泉首相が侵略戦争の精神的支柱であった靖国神社に参拝したことは、アジア・太平洋戦争における侵略を正当化することと同じであり、そのような行為は、日本国の総理大臣として道義的にも、倫理的にも許されない行為です。

 私たち日本の教会も先の戦争において侵略戦争に協力するという罪を犯しました。だからこそ、多くの日本の教会は戦後、アジア近隣諸国への侵略戦争に対する戦争協力の罪を告白し、二度とそのような過ちを犯さないことを誓ったのです。したがって、私たちは、侵略戦争の反省をくつがえし、アジア近隣諸国との和解を裏切る小泉首相の靖国参拝を見過ごすことができません。

 

 以上の理由により、わたしたちは小泉首相の靖国神社参拝に強く抗議するとともに、小泉首相が日本国憲法99条の「憲法尊重擁護義務」を遵守し、今後、靖国神社参拝を行わないよう強く要望します。

 

2005年11月8日 

                   包括宗教法人  日本キリスト改革派教会
                  代表役員・大会議長 山 中 雄 一 郎 



※本抗議声明に関しては、日本キリスト改革派教会宣教と社会問題委員会の承認により、
  掲載しています。


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